「マンマ・ミーア！」は1999年4月6日、「ABBAデビュー25周年」で盛り上がるロンドンのプリンスエドワード劇場で開幕した。当日は劇場へ向かう著名人や評論家でロンドン中心部の交通は渋滞。様々な世代をクロスオーヴァーして愛されているABBAの懐かしいヒット曲をたくみに生かしたステージに、観客は熱狂し、カーテンコールは総立ちで出演者とともに「マンマ・ミーア｣と「ダンシング・クイーン」を歌い踊るという驚くべき光景が繰り広げられた。
この明るく楽しいミュージカルはたちまちロンドン中を魅了した。イギリスの評論家たちは心を奪われ芝居好きたちはチケットを求めて大騒ぎ。初日の翌週の月曜日には（4月12日）一日だけで250603ポンド(約4380万円)ものチケットを売り上げるという記録を樹立して、「ロンドン最大のヒット」「驚くべき現象」という報道がなされた。開幕以来連日ソールドアウトを記録し現在もロングランを続けている。

2000年の5月にはカナダのトロントでも開幕。
ここでもチケットの売上記録をやぶり「ライオンキング」にならぶ大ヒットミュージカルとしてロングランを続けている。同年11月には、全米プレミア公演がサンフランシスコでスタート。全米が注目する中、観客のスタンディングオベーションを浴びてセンセーショナルなアメリカでビューを果たし、あらゆるチケット売上記録を破った。
サンフランシスコ・クロニクル紙は「週間総売上が約100万ドル『マンマ・ミーア！』はサンフランシスコ演劇史上最大のヒット作のひとつだ」と報じたほど。
ブロードウェイで大ヒットした後にツアーを巡るという通常のやり方をあえてとらずに、逆にツアーから話題に火をつけてブロードウェイ入りする型破りの興業スタイルも注目をあびている。

2001年6月にはオーストラリアに上陸。
現在もロングラン中のメルボルン公演は歴史的大成功のうちに客席を熱狂の渦に巻き込んでいる。

「マンマ・ミーア！｣は20世紀が生んだ伝説のポップグループABBAのヒット曲ばかり22曲で構成されたロンドン発のミュージカル。
ABBAはこれまでに全世界でシングル・アルバム合わせて約3億5千万枚以上の驚異的セールスを記録。このミュージカルはABBAのヒット曲「ダンシング・クイーン」や「チキチータ」などを全編に散りばめられながらも、ほとんど歌詞を変えずにそれらをうまく繋いで、まったくのオリジナルストーリーを創り上げた点で非常にユニークな作品になっている。
70年代の女の子が抱いていた夢と希望と､90年代の女の子の夢と希望を､母と娘という二世代の女性の恋愛を通して描いたロマンチックコメディーとして｢マンマ・ミーア｣は創られた。人生を完璧なものにするために、必ずしも男は必要でないと考えている、強気で独立心旺盛な未婚の母ドナと皆から祝福された結婚式を挙げてごく普通の幸せな暮らしを夢見ている20歳の娘ソフィーの対照的な生き方がストーリー性のあるABBAの美しく軽快な曲に乗せて描かれている。
「もしも父親がバージンロードをエスコートして歩いてくれたら・・・」
物語はソフィーのこんな娘らしいささやかな願いから始まる。エーゲ海に浮かぶ小島を舞台に1幕はソフィーが魅力的な若者スカイと結婚式を挙げる､その前夜まで。2幕は結婚式当日の設定で「結婚」をテーマにストーリーは展開していく。

第1幕
エーゲ海に浮かぶ美しい小島。20歳のソフィーは結婚を間近に控え、人生で最も輝く時を満喫しながらもちょっぴり不安を抱えています。父親が誰かわからないのです。母親ドナの昔の日記を盗み読みして出生の秘密を探ろうとしますが、決定的な証拠はつかめません。とうとう彼女は結婚式に来てくれるようにと祈りを込めて、父親かもしれないサム・ビル・ハリーの3人にこっそり招待状を出しました。
式の前日、ドナが女手ひとつで経営するホテルに、かつての歌手仲間ターニャとロージーが到着しました。女3人は久々の再会を喜びます。そして、サムとビル、ハリーの3人もやって来ます。ソフィーが出迎えますが、そこへ現れたドナは彼らを見て驚き、未だに断ち切れていなかった昔の思いと後悔に心を乱してしまうのです。
一方ドナの部屋では、ターニャとロージーがドナ・アンド・ダイナモスのポスターを見つけ、当時の衣裳を引っ張り出して昔を懐かしんでいます。そこへ入ってきたドナは、大事な娘の結婚式を今更のこのこ現れた3人の男に台無しにされたくないと心配しますが、ターニャとロージーは自分たちのヒット曲「ダンシング・クイーン」を歌って傷心の友を慰め、やがてドナも引き込まれて一緒に歌いだします。
そのころ、ソフィーの婚約者スカイは、父親が誰かという問題で頭がいっぱいの恋人に君の愛のすべてを僕に注いで欲しいと優しく語りかけます。
こちらはすっかり歌手時代の気分に逆戻りのドナと仲間たち。ホテルの中庭で昔の派手な衣裳をつけ「スーパー･トゥルーパー」を歌って集まった女たちから喝采をあびています。そこに現れたのがサム･ビル・ハリーの男3人。ドナたちは、女だけのパーティへの闖入者に抗議しますがソフィーはお構いなしで彼らをダンスに誘い、皆で賑やかに歌い踊ります。
その騒ぎを抜け出したビルを追ったソフィーは彼こそ自分の父親ではないかと思い込んで、結婚式のエスコートを頼みますが、招待された意味に気付いたサムとハリーからもエスコートの名乗りを上げられ彼女はすっかり混乱してしまいます。

第2幕
深夜、モーニング姿の3人の父親に追いかけられる夢にうなされ、思わず叫び声をあげたソフィーは翌朝、中庭に呆然と立ちすくんでいます。それを見たドナは娘が結婚に気後れしているのではないかと心配して声をかけますが、母親が結婚に反対なのを知るソフィーは拒絶します。惨めな気持ちになるドナ。そこへ現れたサムは彼女に優しい言葉をかけ、ドナはそれに反発しますが、今でも惹かれあっている2人は､心の中で互いを求め合うのでした。
コメディーリリーフを受け持つ脇役たちもこのあたりで個性を発揮しはじめます。
中年になっても美しいターニャはおばさんのパワーを炸裂させて若い男の子をからかう始末。ロージーもどうやらビルに目をつけた様子です。
一方ソフィーはスカイに内緒で3人の父親候補を招待したことを告白、助けを求めますが彼は彼女が何を望んでいるのかわからないと言って立ち去ってしまいます。サムは残されたソフィーに父親らしく結婚を考え直すように勧めるのでした。
その頃ハリーは式の準備に忙しいドナの部屋を訪れ、こちらも花嫁の父親として結婚式の足しにと小切手を渡します。2人は初めて出会ったパリの思い出に束の間浸りますが、ウエディングドレスを抱えたソフィーの登場でいいムードは中断。花嫁の着付けを手伝いながらいよいよ自分の手から離れて嫁いでいく娘を感慨深げに眺め、ドナは感傷的になります。ソフィーはそんな母親にエスコートを頼みました。娘を送り出しながらこれまでの人生を振り替えるドナ。

そしていよいよ結婚式が始まります・・・。