2009冬特大号(No.42)
石井一孝さん・金 志賢さん・浦井健治さん インタビュー
石井 一孝さん( モリーナ役)
モリーナは女装しているゲイの役です。前回演じたとき今までにない役どころだったので、
役作りの入り口がなかなか掴めなくて。僕は生まれも育ちも葛飾区で「男は男らしく女は女ら
しく」と言われて育てられたので、いざ自分でやってみようと思っても、最初は女性らしい仕
草や女心が分からなくて。稽古に入ったときにはTシャツにズボンという普段の稽古着のスタ
イルでやっていたのですが、鏡に映る自分の姿を見て、これじゃあダメだと。モリーナは綺麗
なものを身にまとい、女性らしく振舞っているタイプなので、稽古着から女性らしいものを着
て、荻田先生に色々と教えていただきながら僕なりに苦労して初日にたどりきました。
あれから2年経ち、せっかく掴みかけた女心を少し忘れてしまいましたので(笑)、またビシ
ビシとしごいていただき、前回より更に女心を磨いてモリーナという役に没頭し、名作の名に
恥じないように演じたいと思います。
金 志賢さん ( オーロラ/ 蜘蛛女役)
オーロラ/ 蜘蛛女役をやらせていただきます。私は今回が初参加となります。私の印象として
は、蜘蛛女はもしかして自分の中で、モリーナとヴァレンティンを使って楽しんでいるような
部分もあるんじゃないかと思います。人間が考えているような理性的なものではなく、自分の
考えで物事を動かし、それによって何かが起きるということを喜んでいるような存在なのかな。
そのあたりも演出家と話して役作りをしていきたいと思います。
楽曲は、歌うのは難しいのですが前奏を聴くだけですぐにその世界に入れるような音楽なの
で心はとても作りやすいです。荻田さんの歌詞もすごくいいのでその深さが出せるように頑張
らないと。そして、踊りが結構ある役ということで、体力を付けたいなと思っています。去年
韓国でミュージカル『シカゴ』のヴェルマ役をさせていただいたことで少し感じは掴んだので
すが、これまで長い間歌を中心にやってきたので、今回はダンスもしっかり頑張らないと、と
思っています。
浦井健治さん( ヴァレンティン役)
2 年前の上演時、少しでもヴァレンティンの気持ちを理解したくて原作の舞台であるアルゼン
チンに行きました。行ってよかったなと思うのは、建物や街中の雰囲気を実際に目で見て、肌
で空気を感じられたこと。みんな生きるのに必死で、何かふつふつとしたものを心の中に抱え
て毎日生きているということを強く感じました。
前回は、ヴァレンティン役を演じるにあたり、ひげを生やしたり、筋トレをしたり、外見
的な男っぽさを出すにはどうしたらいいんだろうということを考えていました。千秋楽まで
無我夢中で演じましたが、実は(外見は女らしい)モリーナと(外見は男らしい) ヴァレンティンは、
内面的に男と女が逆なのではないかということに気付きました。
ヴァレンティンはモリーナに対して、どうやって心を開いていったのか、ひょっとして利用
しただけだったのか、など色々と考えたら深い迷路に迷い込んでしまったような感じもします。
今回の再演では、その辺りを更に掘り下げ、内面の部分と向き合って、作り上げていきたいと
思います。
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石井 一孝さん
2009年は4本連続で休みなく舞台をやらせていただきました。北海道から九州までの全国公演を
(違う作品で)2回やり(笑)、各地のおいしいものもいただきました。少しだけ空いた時間には
ライブ活動を行い、年末には浦井君をゲストに迎えてディナーショーもやります。来年はいよいよ、
『蜘蛛女のキス』の再演です。
4月には新国立劇場の『夢の裂け目』(井上ひさし作・栗山民也演出) に出演させていただきます。
東京裁判という重いテーマの作品ですが、普段ミュージカルではなかなかお目にかかれない方々とも
ご一緒できるので、新しいチャレンジができることを嬉しく思います。
金 志賢さん
劇団四季に長い間在籍していましたが、退団後初めて日本で四季以外のミュージカル『ブラッ
ド・ブラザーズ』に出演させていただきました。これからも、母国の韓国での活動もあるかもし
れませんが、大好きな日本でも求められる役者になって、色々な作品に出たいなぁと思っています。
浦井健治さん
2009 年はあっという間でした。たくさんの舞台に出させていただきありがたく思います。
来年は、劇団☆新感線に初めて出演させていただきます。『薔薇とサムライ』という作品です。
すごく好きな劇団で、客席に座って始まる前の音楽を聴いているだけでわくわくします。
それを今度は幕の内側から経験できると思うと身震いしますし、熱くなります。これからも
色々なところでお声をかけていただけるように、チャレンジし続けたいと思います。
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