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2009秋特大号(No.41)

 

10th Anniversary 特別企画 熊川哲也さん インタビュー

 
熊川哲也さん インタビュー
 
熊川哲也さん インタビュー

熊川哲也さんプロフィール
1972年3月5日生まれ。北海道出身。

1982年 10 歳でバレエを始める。1987年
英国ロイヤル・バレエ学校に入学。

1989年 ローザンヌ国際バレエ・コンクールで
日本人初の金賞受賞、同年東洋人として
初めて英国ロイヤル・バレエ団に入団し、
その後は同団の最年少プリンシパルとして
数々の作品で活躍、1998年退団。

1999 年 <K バレエカンパニー> を
創立、今年で10 周年を迎える。

芸術監督・バレエダンサーとしての
活躍だけでなく、バレエスクールも開設し
後進の育成も行っている。

 

 <情報紙ターミナル創刊10周年記念スペシャルインタビュー> として、熊川哲也さんに
ご登場いただきました。熊川さんが芸術監督を務める<K バレエカンパニー> も1999年に
創立され、今年で10周年。年間の公演回数は約50回、観客動員10万人を誇るバレエ
カンパニーに成長し、常に進化し続ける活動内容は国内外から注目を集めています。

 熊川さんは、このカンパニーでバレエダンサーとしての活躍はもちろん、演出や振付も
手掛け、自らの理想とするバレエ芸術の創出に全力を注いでいます。「古典芸術である
クラシックバレエが愛され続けるよう、クオリティの高い作品創りに励んでいる」という
熊川さんのお話を伺い、バレエに対する強い情熱と愛情を感じました。

 
熊川哲也さん インタビュー

 10 歳の頃、いとこがバレエを習っていて、その姿を見ているうちに自分でもやってみたく
なって始めました。北海道の男の子の中で、バレエというものは浸透していませんでした
から、最初は未知の世界のことを体験してみたいという興味本位でしたね。次第に技を
習得していく過程を通して自分が少しずつ上達していくのが分かり、それがとても楽しかった
んです。その気持ちが今も続いているから、今日の自分があるんだと思います。

 
熊川哲也さん インタビュー

 英国での10 年間は、とても大切な時間でした。今の僕を形成してくれた場所でもあり
ます。
 外国に行ったからこそ日本のよさを感じるということはもちろんあるのですが、それ
以上に英国人の“ 先人に対する敬意や自国へのリスペクト” を、日々の生活や彼らの
言動の中で目の当たりにし、僕自身も日本人であることの誇りを教えてもらいました。
 僕は古典芸術をやっているので、根源として学ばなければいけない“ 心” を学べたと
いうことは非常によかったと思います。何百年前の人たちへのリスペクトはもちろん、
身近な先生や先輩への尊敬がいかに大事かということですよね。中学校まで過ごした
北海道のことしか知らなかったので、日本と英国のバレエ環境の違いというのは、
帰ってきてから色々感じるところがありました。

 
熊川哲也さん インタビュー

 英国での経験を通して感じたことを生かし、自分なりのバレエへの思いを形にしたくて
立ち上げました。ダンサーがダンサーとして光っていられる環境を整え、本当の意味で
プロフェッショナルなバレエカンパニーはどうあるべきかを考えた結果、現在のような形
になりました。始めた時は、どんな活動ができるのか未知数でしたね。体力的・精神的
に大変なこともありましたが、それが楽しいと思える毎日でした。

 
熊川哲也さん インタビュー

 バレエカンパニーとして、新作バレエを創ったり、バレエスクールを開いたりして、
活動は広がってきていると思います。10年経った今、僕自身こういうことがしたかった
んだなということが結果として現れてきています。
 バレエは観てくださる方がいないと成り立たないものだと思うので、ファンの方々には
本当に感謝しています。それと同時に、僕自身の活動がここまで大きなものになったとい
う自負もあるし、ダンサーやスタッフたちの頑張りでもあります。みんなの力が結集して、
10年という節目を迎えられたので、これからも前を見て突き進みたいですね。

 
熊川哲也さん インタビュー

 クラシックバレエを職業にするからには美しくなくてはいけないと思っています。しか
し、その裏に、残酷さもあります。その辺りは、アスリートと似ているかもしれませんね。
僕たちがやっていることは精神性や芸術性など、点数ではないものを求めています。
自分が、いちダンサーとして、そしてアーティストとして、今後どれだけ自分のモチベー
ションが上がる活動ができるかが、これからの自分にとって大事になってくるんじゃない
かな。モチベーションというのは人から与えてもらうものでもあるけど、自分で探すもの
だと思うし、そういうことを考える年齢に来ているのかなとも思います。

 
熊川哲也さん インタビュー

 2年前、公演中に右膝前十字じん帯損傷という大きな怪我をしました。正直、これほど
大きな怪我は初めてだったので、絶望感はありました。ただ、救われたのはその時すでに
バレエを製作する裏方としての感覚が芽生えていたので、バレエに携わる表現方法は
踊ることだけではないということに改めて気付きました。もちろん怪我をしないに越した
ことはないのですが、若いダンサーも育ちましたし、得るものはあったと思います。
 10代20代の頃は、自分をアピールする手段としてバレエをやっていたような気がします。
若い人はみんなそうかもしれませんが、いかに自分をアピールするかということを常に
考えていました。それが30 代になった今は、自分のことはさて置き、自分が愛している
バレエをどうやって表現していくのかという気持ちが最初に来ます。それほどバレエが
好きなんでしょうね。人生経験を積んで、痛みも分かるようになったからこそ、バレエ
に対する表現方法や接し方が変わってきたんじゃないかと。

 
熊川哲也さん インタビュー

 古典芸術であるバレエは、敷居の高さも必要だと思っています。想いを込めて上質な
ものを作っていたら、それをいいと思う人が必ず付いてきてくれるだろうと。
 この秋に上演する『ロミオとジュリエット』のテーマは、ずばりロミオとジュリエット。
シェイクスピアという偉大な作家が書いたこの恋愛悲劇を、作品の持つ力を生かして
上演できたらと思っています。

 
熊川哲也さん インタビュー

 4 歳〜 19 歳までの <K バレエスクール(小石川/恵比寿)> と大人のための
<バレエゲート( 恵比寿)> があります。子供たちの親御さんの姿を見て、僕の両親も
僕にこういう風にやらせてくれていたんだなと思い、改めて感謝しますね。趣味で
習っている方たちの発表会も観ましたが、みなさん本当に素敵でした。
 バレエを通してこんなに心豊かになって、感動してくれて。それって素晴らしいことだ
なぁと思います。皆さんの姿を見て、エネルギーをもらっています。
 僕自身も、攻めの気持ちを忘れずに、まだまだ精神的にも肉体的にも追い込んで
活動していきたいと思います。

 

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