感謝の心を忘れずに・・・
★★★松島トモ子さん



 
内容は発行した時点での内容です
 

松島トモ子(まつしまともこ)プロフィール


★ 松島トモ子(まつしまともこ)

目黒区在住。タレント・女優。

1945年、旧満州で生まれる。
3才からバレエを習い始め、4才で映画デビュー。
子役としてテレビ・ラジオ・舞台・雑誌などで大活躍する。
1964年にはアメリカに留学。
その時の留学日記「ニューヨークひとりぼっち」はベストセラーになった。
現在はテレビ・舞台・講演などで活躍している。





旧満州から引き揚げ、戦後、映画で一世を風靡した松島トモ子さん。名子役といわれる少女時代から現在まで幅広い活動を続けているが、最近は「ホームレスさん こんにちは」という心温まるレポートも本にまとめている。戦後60年の節目の年も終わりに近づいた今、戦後の芸能界を生きてきた、松島トモ子さんにお話を伺った。




<生後10ヶ月、引き揚げ船で日本へ>
終戦の年の昭和20年7月10日、松島トモ子さんは旧満州奉天(現在の中国瀋陽市)の満鉄の病院で生まれた。父は三井物産に勤務していたが、トモ子さん生まれる2ヵ月前、現地召集を受けシベリアで捕虜となっていた。

そして終戦、10ヵ月のトモ子さんは母の懐に縫い付けられた袋に入れられ北奉天駅から無蓋貨車で引き揚げ船が待つ港へ。昭和21年6月のことだった。トモ子さんは「母はその時25才でした。想像を絶する苦境にもかかわらず“子守歌”と精一杯の“笑顔”を私に与えてくれたことは本当に感謝です。中国残留孤児のニュースを見聞きするたび複雑な思いがします」と語る。
そして博多から戦火を逃れていた母の実家で祖母のいる目黒区柿の木坂へ。

<3才で初舞台の豆バレリーナ>
それ以来ずっと柿の木坂から引っ越したことはない。栄養が足りず病弱だったトモ子さんの足を鍛えるため母はモダンダンスの第一人者といわれる自由が丘の石井漠氏のスタジオの門を叩く。もともと音楽を聞くと踊り出すほどのダンス好き、驚くほどの上達ぶりで、3才半で初舞台を踏んだ。小さな女の子がスポットライトを浴びて踊り始めると日比谷公会堂の観客から、どよめきが湧き上がったという。さらに、ニュース映画で“小さな豆バレリーナ”として全国の映画館で紹介された。これがきっかけとなり、映画出演の依頼がくる。

<主演映画は80本以上>
デビュー作は阪東妻三郎主演の映画「獅子の罠」。再三の要請に母も「一本だけなら」と承諾。4才になったばかりだった。“一本だけのつもり”がさらに依頼がかかり三益愛子主演の“母もの”の子役で出演。三益さんは当時都立大学の近くに住んでいた頃から撮影所までの送迎はいつも一緒で演技の指導も受けたという。さらに市川右太衛門、長谷川一夫、嵐寛寿郎ら往年の大スター達との共演が続き、主演映画は80本以上という。

<単身留学で貴重な体験>
そんな中でも最優先を心掛けたのが学校生活。仕事との両立に苦労はしたが、東根小学校で担任だった惟村先生やまわりの人々の心遣いが嬉しかったという。中学は上野毛の大東学園。守屋園長の「何か一つ秀でた科目を修得してみては・・・」とのすすめもあり、英語を身につけるため単身でアメリカへ留学。生まれて初めて“普通の女の子”としての貴重な時期を過ごした。帰国後は英語を生かしリポーターとしても活躍。海外の見聞は、さらに広がったという。

<変わらぬご近所の付き合い>
45才の時、父の死を知らせてくれた新聞記者である知人が描いてくれた地図をもとに、母とシベリアを訪れ父の眠る丘に立った。いつか帰ると信じていた父に母は“トモ子もこんなに大きくなりました”と報告したという。今はその母と愛犬アドロと幸せに暮らす。長年変わらない柿の木坂のご近所付き合い、大むらのおそば、駒沢通りのアサヒ薬局、東根小学校の同級生、みんな長いお付き合いをしている。


<ホームレスの人々との心の交流>
現在、トモ子さんはレポーターとしても活躍しているが、日比谷公園にある日比谷ガーデンの奥さんの紹介でホームレスの人たちとの交流が始まった。「ちょっと話を聞く位のつもり」が回を重ね、心の交流にまで深まっている。その交流をまとめたのが「ホームレスさん こんにちは」。特に公園のホームレスを仕切っている通称「先生」と呼ばれる中村さんとの交流は心に迫る。活動範囲は日比谷からニューヨークにまで広がる。ホームレスの人々に会って聞いた何気ない話の中にはそれぞれの人生がズシリと感じられる。が、しかし暗さを感じさせないのはトモ子さんお温かな眼差しと優しさがにじみ出ているからだろう。

<夢の実現に向けて>
トモ子さんは一つの夢を持っていた。それは母や愛犬アドロと毎日歩いている散歩コースにある、めぐろ区民センターのパーシモンの小さなホールで会を開く事。「毎日歩いている散歩コースにあるホールで、ご近所の方々にも来て頂いて何か楽しい会ができたら・・・」と語る。歌に踊りにお芝居に、さらにはレポーターや著者としても活動している多才、多芸なトモ子さんが開く楽しい会!来年初夏頃には実現したいという。


温かな眼差しとやさしさ。
松島トモ子さんの著書「ホームレスさんこんにちは」は株式会社めるくまーる発行。
定価千三百六十五円、書店で販売中。