【モノがたり】日本画家 栗原由子さん

 今回インタビューしたのは、日本画家の栗原由子さん。細やかな観察力によって描かれた栗原さんの日本画は独創的で、見た瞬間に惹きつけられるものがありました。10月から「柿の木坂マルシェ」で企画展を開催(P23参照)。普段は描かないクレヨンを使った〈お菓子のパッケージ〉という新しいテーマに挑戦しています。

◆経歴を教えてください。
 親の転勤で小学校時代はシンガポール、中学校時代は千葉県、高校時代はアメリカと引っ越しを繰り返しました。大学は、筑波大学芸術専門学群日本画コースに入学して、その後、筑波大学修士課程芸術研究科日本画を専攻して修了しました。

◆美術に興味を持ったきっかけは?
 母親が女子美術大学の油絵科を卒業していたこともあり、私にも幼いころから絵を描かせていたようです。私自身も、その頃から「絵を描く仕事に就きたい」と言っていたそうです。私が中学生くらいの時にスタートした『週刊 グレート・アーティスト』という雑誌があったのですが、〈西洋の絵画シリーズ〉の後、〈日本の絵画シリーズ〉が始まりました。買い続けている途中で海外に転校になったので、祖母にお願いして続きをずっと送ってもらっていたんです。その中に『福田平八郎』という日本画家のものがあって、私の中で、すごくしっくりきました。こんな絵を描きたいなと思ったのが高校2年生の時です。それまで、あまり意識をしていなかったのですが、海外での生活が長かったためか逆に日本のものに興味が湧いていました。大学で美術をやるとなると油絵か日本画の二択。油絵はうまく扱えず自分には合わなかったので、日本画にしようと決めました。日本画を描く時に使う岩絵具の名前が、とてもキレイだったのも選んだ理由の1つです。

◆今のスタイルが誕生したのは?
 大学3年生くらいまでは、自分の絵のタッチというのも意識せずに色々なものを描いていました。夏休みに実家へ帰った時に、暇を持て余して台所にあったカボチャをペンで描いてみたんです。そのスケッチを見た大学の講師が「これ面白いじゃない。こういう感じで描けば良いのに」と言われて。私は深く考えずに楽しく描いてたので「え、これで良いの!?」と少し驚きました。でも、これで良いのなら、どんどん描きたい!と思ったのが、今のスタイルになったきっかけです。

◆色の乗せ方が独特ですよね。
 例えば手のひらを描く場合、細かく観察していくと血管の青っぽさや、ちょっと赤くなっている部分が丸っぽく見えたり、それを1個ずつ追っているという感覚です。すごく抽象的だと思われるのですが、実はとっても具体的に描いているつもり。当然、その形の中で誇張するところもあります。「お花の写真があれば描けますか?」と言われても、葉脈や少し枯れている部分までは写真だとイメージでしか表現できないので、実物が無いとそこまでは細かく描けません。日本画の画材である岩絵具は、鉱石を細かく砕いで色にしているので、塊の状態だと濃くて、砕くと白っぽくなります。その粗さの段階で色を作っていくので、ある意味無限に色の表現ができのも日本画の面白いところです。

◆今後やってみたいこと。
 今はデザイン会社で仕事をしながら絵を描いているので、できれば絵1本でやっていきたいです。2年に1回開いている個展を毎年開催できたら良いなとも思います。今、月に1度子供の造形教室を開いていますが、大人の写生会もやってみたいですね。大人になってから映画を見たり、音楽を聞くことは気軽にしていると思いますが、絵を描くとなると少し構えないとできない。皆で同じものを描くと、こんなに違う仕上がりになるんだと感じる表現の場があると楽しそうですよね。
■HP http://yuko-kurihara.com/

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▲「この作品「木まわりあな」は、長野県にある栄村という豪雪地帯のブナの森を取材しました。ブナの幹を伝って落ちる雪解け水で出来るツリーホールと呼ばれる穴の形が面白くて描いたものです」と栗原さん。この他の作品はHPでも見ることができます。http://yuko-kurihara.com/

【栗原由子さん参加イベント】
■千住紙ものフェス〜紙でつながる人とまち〜

日 時:11月26日(土)~11月27日(日)13:00〜17:00
場 所:長円寺(足立区千住4-27-5)北千住駅から徒歩5分
入場料:300円(中学生以上)
足立区を中心とした印刷会社数社と出版社およびクリエイターが手をたずさえ、
紙の「もの」「こと」でご来場のみなさんとつながる二日間。
ワークショップ、実演、販売、映画上映、トークショー、
そしておいしい食事と飲みものも楽しめるあたたかな秋のイベントです。
https://www.facebook.com/events/672792382877890/

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★イベントも開催!
okasi

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